黄金の宝石箱

カードワースのサイトです。気紛れに作ったシナリオがおいてあります。


Estafador 第二話:ゴブリンの洞窟

Estafador 第二話:ゴブリンの洞窟
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思ったとおりだ、これなら読める。


まっくらな部屋の窓を開けると薄青い月の光が射し込む。ひらひらと白いカーテンが夜空に舞った。
ぼろぼろの楽譜をテーブルの上に拡げ、姉の形見であるフラメンコギターを構えて軽く弦をはじく。

静寂の部屋を振動する弦の、分厚く力強い音が支配する。故郷の音。何度か弦の張りを調整し、思い通りの音が出て満足した。これで良い。


姉のエルレインが好きだったあの歌。俺は、軽く口ずさみながらギターの上で指を躍らせた。


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”近くの洞窟にゴブリン達が住み着いたので追い払って欲しい。報酬は600sp”


下水道での依頼を終えた二日後、フィロは亭主に呼び止められこの話を聞いた。依頼主は農家らしい。
「何、半日もかかれば片付く。報酬はまあこんなものだろう」一通り説明を受けてフィロは答えた。「腕鳴らしには良い感じだ。おれが受けよう」
「そうか。それで今回はお前さんの先輩にも同行して貰う。仲良くやってくれ」
「先輩? 誰だ?」
フィロが首をかしげると亭主はテーブルが並ぶ客席へ「アドル、来てくれ」と呼びかけた。すると、カウンター寄りの席に座っていた若い男が立ち上がり二人の元へと歩んだ。男が一度亭主に視線を送ると亭主は頷き、男も頷いてフィロを見ると柔らかい笑顔を向けた。

「君が新人のフィロか。話は聞いてるよ。僕はアドル。今回、君と一緒にゴブリンの討伐へ向かう冒険者だ。宜しく」
アドルが手を差し出すとフィロは握手した。彼も笑顔を向けた。
「あんたが先輩か。俺はフィロ、まだ依頼は一つしか受けてないが一応、腕に自信はある。足手纏いにはならない様にはする」
「それは心強い。僕より君の方が強そうだ」


***



二人は農家を訪れた後にゴブリンが住み着いた洞窟の場所を聞いた。入り口を発見し、少し離れた草の茂みから確認すると一体のゴブリンが見張っている。時折、欠伸をしては床に寝転がったりとあまり熱心に見張っている様ではなさそうだ。
(どうするんだ?)小声でフィロがアドルに囁いた。
(方法は幾つかあるが、このまま突撃しては仲間にばれてしまうだろうな。あの通り油断しているから遠くから攻撃しても良さそうだ)
(成程な。よし、おれに任せてくれ)フィロは屈みながら槍を構えた。

(投げて当てるのか? 失敗したら仲間を呼ばれるが――)
(ノンプロブレーマ。まあ、見てなって)言うと、フィロは見張り目掛けて槍を勢い良く投げた。

「ガッ――――」
槍先はゴブリンの喉元を貫き、そのまま絶命させた。二人は念の為、倒れたゴブリンの元へ近付き死んでいる事を確認した。
「凄いじゃないか、あの場所から一撃で急所を狙うなんて」
「まあな。ガキの頃から川の魚とかを槍で仕留めてたし大した事はない」
言いつつもフィロは少し照れていた。


二人は洞窟の中に入る。
辛うじて入り口から光が入ってくるが中は薄暗い。が、ゴブリンは夜目が利くのでこの程度の暗さなら何ら問題がないので人間が不利になる。旅立つ前にアドルがフィロにそう注意していた。
少し進むと道が二手に分かれた。耳を澄ませると右側の通路から何やら地鳴りの様な音が聞こえてくる。何の音だ、とフィロが首を捻った。
「鼾(いびき)だ。多分、この先でゴブリンが眠っている」
「……ああ。成程な。それじゃあ先にそいつから始末するか」

右へ伸びる通路を進む。すると、奥の壁に寄りかかりながら眠るホブゴブリンが居た。
同時に、洞窟中に響き渡っているのではないかと思う程に大きな鼾をかいている。
「……ひでぇ音だな。どうする?」
「僕が止めを刺そう」
アドルは剣を抜き、ホブゴブリンの首を一振りで落とした。
「ほう、優男な風貌の割に容赦ない事だ」ヒュウ、とフィロは口を鳴らしながら言った。
「僕だって伊達に場数は踏んでないからね」
刃先の血を拭き、剣を鞘に仕舞うアドルを見てフィロは、これが冒険者なんだなと改めて認識した。この職業、甘い奴はやっていけない。


元の道を戻り、分かれ道の左側の通路を進んだ。今度は、先程の鼾とは違う意味で騒がしい。複数のゴブリン達が居るのだと二人はすぐに察知した。「ここからが本番だぜ」
二人は得物を取り出した。フィロは槍を、アドルは剣を。ゴブリン達が居る場所は広間になっていて奇襲を行う事は難しい。ならば、真向から挑むしかない。

フィロは殺し合いは初めてではない。しかし、慣れている訳でもない。しかもそれは、自らの身を守る為であって食べる以外の時に自らの意思で相手の命を奪い取る事は今回が初めてである。入り口のゴブリンを刺した時はただ、『的』だと思い込むことによって成功させた。フィロは緊張していた。

農家が困っている為にゴブリン達を殺すとは言うが、結局は金の為だ。金が貰えなければこんな依頼は請けない。
ゴブリン達にだって生活があって、農家が育てている作物を盗んで食べる事は生きる為だ。彼等も必死なのである。
奴等にも家族は居る。そんな奴等を金の為に皆殺しにしてしまっていいのか?

いつの間にかフィロの額は汗でにじんでいた。怯える様に目を見開き、ゴブリン達の声が聞こえている広間に槍を向け、硬直していた。アドルは彼の異変に気付き、声をかけた。
「大丈夫だ、僕がついている。君は死なせない」
「……違う。奴等にも、家族が居るんだ。そんな権利、おれには――」
「気持ちは分かる。僕だって最初はそう悩んでた。でも、生きる為や目的を遂げる為には仕方が無い事なんだ」アドルは続ける。
「ましてや、君が冒険者になった理由があった筈だ。でないとこんな危険な事はしないしね。君が冒険者になった理由を思い出すんだ、フィロ……!」
最後に名前を呼ばれた時、はっとフィロは我に返った。

彼には明確が目的があった。冒険者として経験を積みながら姉を殺害して村を滅ぼした黒の魔術師を殺す事で、その為には如何なる犠牲も払うと誓ったのだ。それを、こんな初心者向けの依頼で躓いてどうすると自分を軽蔑した。
(あのハゲ、おれを試しやがったな……)フィロは息を整えるとアドルに言った。
「すまなかった、心配ない。覚悟は、もう出来ている」
アドルは彼の顔を伺うと、確かに迷いが消えた様に見えた。そして、口元を緩めた。
「そうみたいだね。さあ、最後の一仕事だ」二人は同時に頷くと、広間に踊り出た。


***


広間に出て、フィロは叫んだ。
「やいっ! お前等、得物を抜け! そうしねェと真っ先に死ぬからな!」
ゴブリン達は二人の突然の来襲に驚き、それぞれが慌てて手元に置かれている武器を持ち、意味も分からない雄叫びを上げながら立ち上がる。意外な事にゴブリンよりコボルトの方が多かった。一体だけ外套を被り杖を持つゴブリンが居る。

シャーマンだ。隣に居るアドルが「あいつは魔法を使う、気をつけるんだ!」とフィロに話した。

「●△〒⇒、×■◎!」
ゴブリンシャーマンが杖を真上に掲げ、何かを叫ぶすると、二体のゴブリンと多数のコボルトが一斉に襲い掛かってきた。
「行くぜ、アドル!」
「ああ!」


フィロは槍を左手に構えると、ぐるぐると振り回し相手を牽制した。【風車】である。チャンスを見極め必殺の一撃を浴びせる為で、及び腰になる相手の攻撃は此方には届かない。その間、アドルが二体居るゴブリンの内の一体に袈裟切りを浴びせ、ダメージを負わせた。すると、コボルトが一体恐れをなして逃げてしまった。
「臆病なコボルトは無視してゴブリンを狙うんだ! そのうち逃げて居なくなる!」
「ああ、分かった!」


(不思議に気持ちが落ち着いている。覚悟を決めた為だろうか)
フィロは【風車】で相手を牽制しつつ、安堵する気持ちが芽生えている事に気付いた。

(多分、おれは成長した。だからこんな命懸けの場面でも落ち着いていられる)
アドルが一体目のゴブリンを倒すと、もう一匹コボルトが逃げた。その間、多少反撃を受けたが十分戦える。


戦いながらなぜか、姉のエルレインが歌う歌がフィロの頭の中に流れた。

 スズメよりコンドルになりたい         
 夢もなく飛ぶ 歌もなく飛ぶ          
 花よりは木になりたい             

フィロが足元を狙い、先制して【足払い】をかける。すると、敵全員が転倒してしまった。その間にアドルがもう一体のゴブリンに止めを刺す。

 恐怖や痛みを感じることなく育つ        
 見つけることなく探しつづける         
 休息もせず平和も信仰しない          
 別れて決して戻ることなく生き、過ごす     

ゴブリンシャーマンが起き上がり、何かの魔法を唱えた。すると、アドルが突然ぱたっと倒れて眠ってしまった。
その間にまた一体、コボルトが逃げた。

 そして動いていく               
 愛よりはその口付け(キス)になりたい     
 忘却せず、恨みも持たず、喪に服すこともない  
 私は海に降り注ぐ雨になりたい         

眠っているアドルに残った二体のコボルトが攻撃を行おうとするがフィロが身代わりになる。大きなダメージを負うが何とかその場を踏みとどまった。アドルはすぐに覚醒した。

 絶えることなく 苦しむことなく死を迎える
 引き返すことなく探し続ける

再び敵が増えた事により、残ったコボルトも全て逃げてしまう。一人になってしまい、慌てているゴブリンシャーマンを二人は一気に畳み掛ける。

 見つけることも、信仰も平和もなく
 決別し、リラックスし豊かに暮らす
 そして過ぎ、過ぎていく――――


「終わりだ!」
フィロは助走を付け、猛突進をしつつゴブリンシャーマンの胸元を貫く。【刺突】が決まった。断末魔を上げながらゴブリンシャーマンは血を吐き出し、力尽きた。
「……ふう、終わったね」


***


あの後、広間の奥にゴブリン達が貯めた銀貨と杖があった。フィロ達は遠慮なくそれを戦利品として頂いた。

冒険者の宿へと戻ってきた。フィロは疲れたものの、とても大きな達成感を感じていた。
(これでまた一歩進めた。黒の魔術師……おれは、お前を殺すまで歩み続けるぜ)
一息ついた後にアドルがフィロの元へ近付いて来た。アドルがご苦労様と一声かけると、フィロが言った。
「あんたのお陰でおれはまた強くなった。前へ進めた。もし良かったら、おれとたまに組んで色々と教えてくれ」
アドルはまた柔らかい笑みを浮かべた。
「此方こそお願いしたい。僕も君と共に闘って今回は色々と学んだ。途中足を引っ張って助けてもらったりもした。だから、僕は君の強さを学びたいから宜しく頼むよ」
「おれの戦闘スタイルは野性的なものが多いからあまり参考にならないと思うが、そう言ってくれると助かる」


今度はフィロが手を差し出し、アドルが握手を返した。



☆☆☆
シナリオ名:
報酬:800sp(600sp+200sp(宝箱))
所持金:2000sp
入手:賢者の杖
所持(技能):投擲
所持(道具):破魔の首飾り・眠雲の巻物・傷薬・賢者の杖

(フィロ)
レベル:2
技能:足払い・風車・刺衛
道具:なし

(アドル)
レベル:2
技能:なし
道具:なし


あとがき:
レベル1単独で何度挑んでもクリアできなかったゴブリンの洞窟。レベル2×二人だと殆ど苦もせず一発でクリアできました。戦闘内容はリプレイで書いた感じで進んでいて戦術は「ゴブリンだけ狙え! コボルトは勝手に逃げろ!」です。

ゴブリンシャーマンが使う眠りの雲は1ラウンドの効果なんですよね。
アドルの武器は剣って決めていたのですが結局、スキルを買わずに挑みました。次に何か揃えたいと思います。

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  1. 2012/09/23(日) 21:50:54|
  2. リプレイ:Estafador
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